こんにちは、出版社営業部員のかんらくです。
Amazonプライムビデオ見放題のラインナップに入っていたので、トム・クルーズの「コラテラル (字幕版)」を見ました。
コラテラルとは、巻き添えという意味があるそうです。
私はあまり知らない作品だったのですが、調べてみると、ラジオ番組で行なった「みんな大好き! トム・クルーズ総選挙」で、なんと、
1位になった作品なのですね。
ちなみに2位は、「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」、3位は「トップガン」でした。
では、早速、「コラテラル」の感想と見所を。
満足度は、★★★★星4つです。
あらすじ
トム・クルーズは凄腕の殺し屋役です。
ヴィンセントという名前で、見るからにミステリアスで一匹オオカミでした。
あるマフィアから、夜明けまでに5人を殺せという依頼を受けます。
5人とは、翌日の裁判でマフィアに不都合な証言をする検察側の証人です。
ヴィンセントは依頼を遂行するためにミッションを開始。
たまたま拾ったタクシーの運転手・マックスを気に入りました。
腕がいいからです。
1日700ドルでお抱え運転手として、雇うことにしました。
ヴィンセントの正体を知らぬマックスは1日運転手を引き受けるのですが、すぐに彼の仕事を知ることになります。
脅されて、殺し屋の仕事に無理やりに引きずりこまれていくマックス。
しかし、ヴィンセントと行動をともにしていくうちに、図らずも、人生で覚悟することの重要性を学んでいくことになるのです。
この2人の物語と言っても過言ではありません。
物語は、たった1日を描いています。
「24」みたいですね。
そして、この映画はエンターテイナーのトム・クルーズには珍しく、メッセージ性の高い作品です。
名言が多く、学びもたくさんあります。
マイケル・マン監督がいちばん描きたかった鳥肌もののシーン
見せ場はいくつかあります。
マックスがヴィンセントを名乗って、マフィアのボスに会う場面。
クライマックスのマンハッタンビルの中での銃撃戦。
しかし、マイケル・マン監督がこの映画でいちばん描きたかったのは、おそらくここだと思っています。
それは、4人目の暗殺を終えたあと、次の標的に向かう車中でのやりとりです。
自分の周りで次々と人が死んでいく現実に耐えきれなくなったマックスが、善悪の見境なく、淡々と殺人を重ねるヴィンセントに、罪悪感はないのかと問いかけます。
トム「宇宙には無数の星があり、その1つにくっついた砂粒、それが人間だ。警官、お前、俺・・・一体、なんの違いがある?」
マックス「もし、あんたが銃で脅され、『隣の男が何を考えているか当ててみろ、外したら殺す』と言われたら、きっとあんたは殺されるね。あんたには人の気持ちなんて分かりっこないんだから。あんたは見下げた人間だ。どういう育ち方をして、そんなハートのない人間に? 人間なら誰にも備わっている根本的な何かが・・・欠けてる」
ここまで言われて、さすがにトムもちょっと思うところがあるような微妙な表情をします。
しかし、ここで改心するようなヤワな殺し屋ではありません。痛烈な言葉とマインドの反撃をします。
それはマックスは、今はタクシー運転手をしていますが、独立してリムジン・サービスの会社を興すという夢を持っています。
そして、トムの前に乗せた女性客(車内でマックスと意気投合した)から、「何かあったら電話して」と名刺を手渡されていたのです。(ちなみに、この女性、クライマックスで超重要になってきます)
このことを知ったうえでのトムの口撃です。
トム「フロイト顔負けのタクシー運転手だな。鏡を見ろ、清潔な車、リムジン会社の夢、いくら貯めた?」
マックス「余計なお世話だ」
トム「いつか夢がかなうと思うか? ある夜、目を覚まして気づく。夢はかなうことなく自分が老いたことを。
(沈黙)
お前は本気でやろうとしてない。記憶のかなたに夢を押しやり、昼間からボーッとテレビを見続ける。俺に説教するな。リムジンの手付けぐらい払ったらどうだ? あの女への電話は? なぜ、まだタクシー運転手を?」
この言葉、グサッと胸にささりますね。
やりたいことがあるのに心にリミッターをかけて、「いつか実現しよう」と先延ばしにしていることが、だれにでも一つや二つはあるものでしょう。
この言葉をトムに言わせ、映画を見た人にそれぞれの一歩を踏み出させるために、マイケル・マン監督は、この映画を撮ったのではないかと思いました。
タクシー運転手と殺し屋が、こんなエキサイティングなやりとりをしているのです。
鳥肌ものです。
さて、今度はマックスが言葉を失い、思案げな表情をします。
そして、ここから彼の独白が始まり、彼の人生が動き出すのです。
マックス「俺は自分の生き方をしっかり考えてなかった。ギャンブルで資金集めなんてバカも考えた。リスクを抑え、完璧なプランを立てようと思うだけだった。あんたは、言うだろう。そんなことどうだっていい、と。宇宙から見りゃ、人間は砂粒・・・トワイライト・ゾーンの世界。感謝するよ、そういう考え方を初めて教えてもらった。失うものなんかない! やりゃいいんだ」
そして物語は、ここから怒涛のクライマックスへと、向かっていくのです。
ラストシーンは、めちゃくちゃ余韻の残る名シーン(ここからネタバレ)
さて、最後にネタバレをします。
5人目の標的は、実は冒頭でマックスが車に乗せた検事補の女性だったのです。
その彼女を守り、凄腕の殺し屋と、タクシーの運転手が最後の攻防を繰り広げます。
そして、激しい銃撃戦を終えたあと、トムは地下鉄の中で、事切れます。
「地下鉄で死んだ男がいる・・・、でもだれも気づかない」
そうつぶやきながら・・・。
「彼の人生はいったいなんだったのだろうか」、そう考えさせられ、深い河のよどみのような余韻が残るシーンでした。
トムの底知れぬ孤独感
トム(ヴィンセント)の生い立ちは不幸であったことを、物語の中で彼自身、告白しています。
母親は早くに亡くなり、父親はトムへの暴力を繰り返しながら、トムが12歳の時に肝臓を患い、死んでしまったようです。
彼が、サイコパスのように、人の気持ちに無関心で、冷酷に殺し屋の任務を遂行していくようになったのは、それなりの理由があったと想像ができます。
そんな彼が、マックスの深い人間性に触れ、自分にはないものを彼の中に見出しているようなシーンがあります。
マックスがタクシーを運転しながら、道の真ん中で、ふと車を止めたのです。
トムが怪訝に思っていると、野良犬が通り過ぎていきました。
マックスは道を横切ろうとしている野良犬に気づき、通りすぎるのを待っていたのです。
このシーン、二人は一言も話さないのですが、この直後、トムはこんな表情で、マックスを後ろから見つめます。
居場所のない野良犬に自分の姿を重ね合わせたのか。
マックスの中に、自分が持ち合わせていない、大切な何かを見出したのか。
はじめて何かに目覚めたような顔をするのです。
トムは明らかに、一タクシー運転手にすぎないマックスの人間性に惹かれていました。
これも、忘れられないシーンでした。
やっぱりいい映画ですね。
トム・クルーズ好きが、1位に選んだのも納得です!