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こんにちは。

編集者のかんらくです。

「編集者になりたい!」という志を持っている人は、けっこう多いのではないかと思います。

実感としては、男性よりも女性のほうが多いように思います。

優秀な編集者になるために、性別は関係ありませんが、編集者を目指すかどうか、迷っている人のために、経験から実感している編集者の面白さ、やりがいを7つ、紹介したいと思います。

ちなみに僕は書籍編集者ですので、主に書籍編集者としての内容であると思って、読んでもらいたいと思います。

 

(1)素敵な人との出会いがある

個人的には、なんと言っても、素敵な著者との出会い! これが最大の面白さだと思っています。

人生を豊かにするのは、何よりも、素晴らしい人との出会い。これに勝るものはありません。これは、年を重ねるほどに確信が増している実感です。

少し、余談になりますが、若い頃は、仕事は「何をするか」が一番重要だと思っていましたが、30代後半くらいから、「何をするか」より、「誰とするか」のほうがはるかに大事だと思うようになりました。

それは、やりがいや幸福感、充足感を感じるために、ということです。この思いは今も変わりません。

さて、本題に戻りましょう。

今は、誰でも著者になれる時代、と言っても、やはり著者として、多くの人の心を動かすメッセージを発信できる人は、そう多くはないと思っています。

メッセージやキャラクターに飛び抜けた強さがなければ、書店で輝く本にはなりません。

それらの飛び抜けた才能だったり、思想だったり、経験だったり、人間性を持った人に出会い、直接、成功の本質や、人生観のエキスを聞かせてもらえる、というのは、本当に役得だな、と思います。

編集者というのは、「出版しませんか?」というアプローチが著者にできるので、受けてもらえるかどうかは別として、たいていの人にはリーチできるのです。

別の仕事をしていたら、自分の人脈では、生涯会えなかったであろう人たちに、たくさん会える、というのは、他にはない魅力でしょう。

しかも、ジャンルを問わずに多岐にわたる才能にアプローチすることができます。

それは、多くの人が出版というものに、まだまだ、大きな価値を感じているからでしょう。

出版は、著者の名刺代わりになり、高い信用、ステータスになるからです。

ぼくが最近、手がけたのは、少年ジャンプの主人公のように熱いカリスマ美容師や、異色の天才美術家、保険営業マンのトップセールスマンでした。

いずれの人も興奮を禁じ得ないメッセージで、自分のマインドブロックや思考のリミッターを外されるような貴重な体験の連続でした。

 

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(2)趣味や日常生活がそのまま企画になる。編集者としての糧になる

2つめは、編集者はプライベートの時間も、それがそのまま仕事に生かされ、直結するということです。

職種によっては、出勤し作業をしている勤務時間が仕事の時間で、仕事と日常生活は切り離さざるを得ない、ということが多いかもしれません。むしろ、そのほうがオンとオフのメリハリがついていいという人もあると思います。

趣味や日常生活が仕事に生かされるという特性を利点と感じる人にとっては、すぐれたメリットだと思っています。ちなみに僕はそうです。

例えば、映画を見ている時間、美術館で作品を鑑賞している時間、移動の電車で車内広告を見ている時、居酒屋で飲んでいる時、人気のレストランの行列に並んでいる時、テーマパークで遊んでいる時でさえも、インスピレーションがわき、企画を思いついたり、編集者としての技術を磨く糧となります。

プライベートでセミナーや講演、イベントに参加して、「ぜひこの人に本を書いてもらいたい!」と出会いが生まれるケースは、とても多いと思います。

日常生活を仕事に生かす時に、一つだけ不可欠なのが、問題意識です。

問題意識を持て!

趣味を楽しんでいる時も、日常生活のルーティンを営んでいる時も、そこに問題意識を持つことが非常に大切です。

それは、自分の「感情の動きを明確にキャッチする」ということと、「なぜ感情が動いたのか?」を問い、自分の言葉で腑に落ちるまで、考え抜くという、この2つです。

どんな環境にあっても、生きていれば、「うれしい」「悲しい」「超、感動した!」「やばい、泣けてきた」「なんかイラッとしたな」「めちゃ美味しい!」など、1日の間にいろいろな感情が動きます。

ほとんどは、その感情は流れていき、そんな感情が動いたということすら意識にものぼらず、覚えていないことが多いでしょう。

すべての感情をキャッチするのは不可能ですし、そんなことばかり意識していたら日常生活もままなりませんから、感情が特に大きく動いた時にそれをキャッチすることが大事です。

その感情を客観的に認識し、なぜ、そのように感情が動いたのだろう?、と自分の言葉で納得するまで考え抜くことです。

その答えは、腑に落ちさえすれば、自分にとっての正解でいいのです。客観的な正解である必要はありません。そもそも客観的な正解など誰にも分からないでしょう。

大袈裟に言えば、人の心を動かす、自分なりの法則を見つけ、ストックしていくということです。

出版の目的は要するに、本によって、感動させたり、納得させたり、興奮させたり、人の心を動かしたいわけですから、どうすれば、人の心は動くのか、というストックが自分の引き出しに増えれば増えるほど、編集者としての価値は上がるということです。

その発見は1日1つでいいです。1つであっても、その法則はいろいろな場面で転用、応用ができますから、大きな力となります。1年経てば、365の法則をもつことになります。それは他の編集者と差別化を図る大きな武器となるでしょう。

「感情の動きをキャッチする」「なぜ動いたのかを問う」この問題意識さえあれば、人生で無駄なことがなくなるんです。

レストランで待っている時も、人気のスイーツの行列に並んでいる時も、なぜ自分は並ばずにおれない気持ちになったのだろう?と問えば、すべてがスキルアップの糧になります。

 

(3)やった仕事が後の世に残る

3つめに、本には「後世に残る」という大きな特性があります。

これは、紙の本に特化した特性といえるかもしれません。

歴史を振り返れば、経典に始まり、源氏物語や枕草子、徒然草といった古の出版物が、国を超え、時代を超え、千年後、二千年後の現代人の手に届き、読まれている。これは驚くべき事実です。

紙という素材は、マッチ一本で灰になりますが、伝承され、書写され、印刷され、千年前の出版物が今日まで残っているのは紛れもない事実です。

紙の媒体がいちばん残る、ということをこれまでの歴史が証明しているといえるでしょう。

これに対して、デジタルデータは、登場した時は半永久的と思われましたが、データ形式は進化し、端末も変化するので、データは存在しても、古いデータは見ることができない、という現象が起きてしまうのです。

デジタルではありませんが、VHSビデオは、今日再生機を入手するのも大変です。どの家庭でも結婚式や運動会のビデオテープが押し入れに何本もしまってあるでしょうが、二度と再生することはできないかもしれません。

カセットテープ、ビデオテープ → フロッピーディスク → MD → CD → DVD → ブルーレイと、わずか数十年でデータの保存方法は、目まぐるしく変化してきました。

紙のメディアは、原始的なるが故に、最強なのです。

著者や編集者は死んでも、本は残ります。思想やメッセージは形となって残り、受け継がれていくのです。

もちろん、受け継がれるに値するコンテンツであるという前提ではあります。

 

(4)ステイタスになる

4つめには、俗っぽい理由になりますが、世の中で「編集者」という職業の聞こえがいいということがあります。

「お仕事は何をされてるのですか?」と聞かれた時に、「編集者をしています」というと、それ以上説明の必要もなく、イメージがいいというメリットがあります。

出版社の中でも、編集部はやはり花形部署です。

これは魅力の本質ではなく、オプション程度のメリットでしょう。

 

(5)編集者の職能は応用がきく

(2)で書いたように、編集者として、大衆の代表としての感覚を磨き、言語化する技術を身につければ、他社に転職しても通用しますし、出版に限らず、イベントプロデューサーや、新商品の開発、企業のブランディングなど、多彩な分野で活躍することが可能になります。

ここで大事なことは、特定の出版社の編集部員として最適化しないことです。出版社には、それぞれの文化や、やり方、メソッド、アプローチがあり、その会社だけで通用するスキルを身につけ、そつなく立ち回れるようになっても、それは応用がききません。つまり、環境が変われば通用しないことが多いのです。

編集者としての普遍的な職能を磨くことが大切です。

 

(6)原稿を最初に読める

6つめは、著者からあがってきた原稿を、世の中でまず最初に読めるという特権です。

これもささやかな楽しみですが、よく言われることなので、一応、紹介しておきたいと思います。

どれだけベテランになっても、初めて原稿を手にした時の感動や、自分を信頼して原稿をはじめに渡してくれた著者への敬意、感謝を忘れないことはとても大切だと思います。

 

(7)世の中に新しい流れや文化を作ることができる(かもしれない)

(3)の、「やった仕事が後世に残る」に関連しますが、それだけでなく、もしかしたら、世の中に新しい流れや文化を生み出せるかもしれない、ということがあります。

それが、多くの人たちの幸福につながれば、これほどやりがいのあることはありません。

例えば、『嫌われる勇気』というロングセラーの誕生は、アドラーブームを生み出し、どれだけ多くの人の人生を生きやすくしたかしれません。

スキージャンプの高梨沙羅選手もこの本との出会いによって、スランプを脱出したと、インタビューで告白していました。

 

おまけ

この記事は、編集者の面白さをお伝えするためのものですから、あえて必要ないかもしれませんが、フラットに理解してもらうために、最後に少し、編集者の大変なところも書いておきたいと思います。

ひとつめは、長所でもあり、短所でもあるところですが、日常生活を仕事に直結できる反面、つねに企画のことが気になってしまい、仕事とプライベートの区別をつけにくい、という点があります。

営業部員とは違い、フリーの著者や業者と仕事をすることが多いので、土日や祝日にも、容赦なく、打ち合わせや作業が入ることがあります。これは好きでないと、ストレスになるでしょうね。もちろん、「土日祝日は仕事をしない」と自分で決め、断ることも可能です。

もうひとつは、担当した本が売れると、著者の才能や成果が、まるで自分の成果のように勘違いしてしまい、気持ちが傲慢になってしまうことがあります。編集者は、あくまで大衆の代表として、著者に寄り添うだけで、著者の功績を、自分の手柄と勘違いしないよう、自戒することが大切になってきます。

細かい大変さは他にもいろいろありますが、それらを含めて総合的に考えても、ぼくは編集者という仕事がとても好きですし、自分では天職だと思っています。

何かの参考になれば幸いです。

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