出版社勤務のかんらく(@kan_raku44)です。
池井戸潤の小説は、どれも本当に面白い!
お気に入りの作家に池井戸さんが加わったのは、池袋と上野の書店員さんから勧められたのがきっかけでした。
まだ、堺雅人さんのドラマが始まる2年くらい前でしたが、奇しくも目利きの書店員さん2人から同時に勧められたので、『鉄の骨』『空飛ぶタイヤ』と読み進め、完全にはまってしまいました。
追っかけのように、出版作品をローラーで読む作家は、星新一、山崎豊子、横山秀夫の3氏に続いて、4人目です。
ほぼ全作品を読んだかんらくが、満足度上位3作品を完全な主観で紹介します。
池井戸潤の小説を読みたいけど、どれから始めようか迷っている人は、参考にしてみてください。
1.ロスジェネの逆襲
ふつうは、下位から発表するのでしょうが、もどかしいし、この1位~3位は甲乙つけがたいので、どれを読んでもはずれはないと思います。
なので、早速1位から。イチオシはなんといってもコレです。
視聴率40%超えを叩き出した伝説のドラマ「半沢直樹」の原作シリーズ第3弾です。
TBSのドラマでは2作目の『オレたち花のバブル組』の内容まで、放送されました。ラストシーンは、東京中央銀行から子会社の東京セントラル証券に出向を命じられる衝撃的な終わり方でした。
第3弾の『ロスジェネの逆襲』は、まだドラマ化されていません。しかし、実は、この第3弾こそ、一番面白いし、ラストも爽快なのです。
私は、小説を再読することは滅多にありません。ストーリーが分かっていると思うと、その気がなかなか起きないからです。
繰り返し読んでも面白い
ですが、『ロスジェネの逆襲』は、4回読みました。それでも、ハラハラしながら読めるんです。
登場人物も多く、ストーリーが2転3転するので、けっこう忘れています(笑)
前2作を読んでからのほうが、より感情移入できるとは思いますが、第3弾から読んでも大丈夫です。
池井戸さんのすごいところは、銀行業界という多くの人が経験したことのない未知の世界を舞台にしているのに、なぜかその世界観にひたり、感情移入できてしまうところです。
これは、山崎豊子氏、横山秀夫氏にも共通しています。
ひとたび池井戸ワールドに引き込まれたら、もう読み終わるまで、ページをめくる手を止めることは不可能でしょう。
第3弾は、半沢のセリフも示唆に満ちていて、前2作よりも人間的に成長しています。
はじめの2作は、「その報復はちょっとやりすぎじゃない?」と人によっては、イヤな気もするところですが、第3弾は、歯に衣着せぬ物言いは変わらぬまま、やることの筋が通っているので、読んでいて気持ちがいいです。
最高に痛快な名台詞
中でも、最高に痛快なのがこのセリフです。
「我々の稟議をゴミ扱いするのか、君は」と詰め寄る親会社の部長に、
「ゴミ扱いしているのではありません。ゴミだと申し上げているのです」
と言い切るのです。
これには完全に意表をつかれました。ふつうは、「いえ、決してゴミ扱いはしておりません。問題点があるのではないかと申し上げているだけです」などと、弁明するのが常識ですが、半沢は「ゴミだと申し上げているのです」と、想定外の方向へ、まさかの断言。
何回読んでも気分がスカッとします。
さあ、どんな素敵な場面で、半沢がこのセリフを放つのか、楽しみにしながら読んでみてください。
『ロスジェネの逆襲』については、こちらの記事にも書きましたので、よかったら読んでみてください。
【関連記事】【半沢直樹はもっと評価されていい】半沢 仕事の流儀~ロスジェネの逆襲
2.下町ロケット
こちらも2015年、TBSの日曜劇場にて、阿部寛さん主演でドラマ化され、大ヒットしましたね。 実は先んじて、2011年に、三上博史さん主演で、wowwowでもドラマ化されているのです。
どちらも観ましたが、どちらも面白かったです。何度観ても面白い、それだけ池井戸さんの原作に魅力があることの証でしょう。
原作の『下町ロケット』は直木賞を受賞しています。
ストーリーは、純国産ロケットに、オリジナルブランドの部品を採用されるかどうかをかけて、町工場が大企業に真っ向から戦いを挑む物作り職人の物語です。
半沢シリーズのような銀行ドラマとともに、池井戸さんの得意とする分野ですね。
NHKのプロジェクトXを彷彿とする日本の誇りを思いださせてくれる作品です。
町工場が作る精密機器の品質が、超大企業に一歩もひけをとらず、むしろ凌駕するのですが、周囲の裏工作や権謀術数によって、倒産寸前まで追い込まれます。
しかし、そこで想像もしなかった起死回生の一手が放たれるのです。
果たして、その一手は成功するのか、はたまた万策尽きるのか!
ラストは、さわやかな風が吹く泣けること必至の感動作です。
3.空飛ぶタイヤ
この記事を書いている途中に、来年2018年、「空飛ぶタイヤ」映画公開のニュースを知りました。
間違いなく、見に行きます。ストーリーが分かっていても面白いのです。
赤松運送という、町の運送会社の社長が主人公ですが、この作品にはモデルがあります。
2002年に起きた三菱トラックのタイヤ脱落事故です。ある個人経営の運送会社が、三菱製のトラックで重機を運搬中に、タイヤが脱落し、そのタイヤが若い母子を直撃、29歳の母親が死亡するという痛ましい事故です。
「僕はこの物語から『ひとを描く』小説の根幹を学んだ」
タイトルの「空飛ぶタイヤ」はそこから来ています。自動車会社は、ユーザーの整備不良を訴えますが、運送会社は会社の存続をかけて、トラックの構造上の欠陥を主張し続けます。
訴訟になれば、当然、仕事は激減しますから、本当にいつ倒産してもおかしくない状況です。
池井戸氏が、「僕はこの物語から『ひとを描く』小説の根幹を学んだ」と、自ら語るほど、思い入れのある作品なのです。
平成21年にWOWWOWでドラマ化され、さらに来年、映画化が予定されていますが、同じ原作が何度も映像化されるのは、それだけストーリーが面白いことの何よりの証拠です。
映像は映像で面白いですが、すでにドラマをご覧になった方も、ぜひ、原作小説を読んでみてください。まったく別の面白さがあるはずです。