こんにちは、現役編集者ブロガーのかんらくです。
Amazonプライムで、泣ける韓国の法廷映画を2つ、見つけてしまいました。
「8番目の男」と「無垢なる証人」の2本です。
法廷映画はそもそも大好きなのですが、この2本は掛け値なしに、涙腺が崩壊しました。
こみあげる、というか、突き上げる感じで嗚咽が止まりませんでした。
2本のうち、まずは、「無垢なる証人」から、レビューをつづりたいと思います。
「私の頭の中の消しゴム」でブレークしたチョ・ウソンが、弁護士役で主演しています。
この映画を観るかどうか迷っている人は、迷わず観てもらいたいと思います。
なぜ、そう明言できるのか。
嗚咽が出るほど、感情を揺さぶられるからです。
私の嗚咽ポイントを2つあげたいと思います。
まずは、映画の公式サイトから簡単に、あらすじを紹介しましょう。
長い間、人権派弁護士として信念を貫いてきたものの、現実と妥協して俗物になることを決め、大手法律事務所に移籍した弁護士スノ。
自身の出世がかかった殺人事件の弁護士に指名されると容疑者の無罪を立証するため、唯一の目撃者である自閉症の少女ジウを証人として立たせようとする。自身だけの世界に入り込み、意思疎通が難しいジウ。
スノは事件当日に目撃したことを聞くためにジウのもとを訪れるが、まともにあいさつもできない。
だが、あの日のことを聞き出すためにジウと心を通わせていく努力をするスノ。少しずつジウへの理解を示していくが、2人は法廷で弁護士と証人として向き合うことになり…。
弁護士のチョ・ウソンと、自閉症の少女ジウの演技が素晴らしいの一言です。
冒頭から、チョ・ウソンがどこか覇気のない弁護士なので、優秀な弁護士なのになぜだろうと思っていたのですが、それは、人権派弁護士から、現実と妥協する俗物になることを決め、大手事務所に移ったものの、そこにまだ良心の葛藤があるからだと後に分かりました。
では、一つ目の嗚咽ポイントを紹介しましょう。
ここからは、ネタバレも含みますので、もう観ることを決めた方は、ここからは読まずに試聴を始めてください。
嗚咽ポイント①
1つ目は、二審の裁判における、チョ・ウソンの演説シーンです。
私は、法廷ものが大好物なのですが、なんといっても、この法廷での演説シーンです。
この演説が、感動的で、暖かく心を揺さぶられました。
シーンと静まり返った厳粛な空気の中、誰にもさえぎらせず、胸を揺さぶる演説を聞かされたら、たとえ電車の中にいても、涙をこらえることはできませんでした。
嗚咽ポイント②
2つ目は、二審の裁判で、自閉症の証人・ジウ(キム・ヒャンギ)の証言の正しさと勇気が証明された後日、ジウの誕生パーティーで、ジウが帰り際のスノに対して放った、無垢な一言です。
「ヤン・スノさんはいい人です!」
そのうえ、その言葉を告げた後にスノに駆け寄って抱きつくのです。自分の殻に閉じこもる自閉症の女の子がです。
これはやばい。涙を抑えるのは無理でした。
2回観ましたが、2回目は、背景がわかって観るので、1回目とは別のシーンでさらに込み上げてくるものがありました。
この作品がカタルシスを強くしている要因はいくつかあります。以下に列記しますが、これらが積み重なって、高い満足度を生み出しているのでしょう。
(1)弁護士役のチョ・ウソンの演技が素晴らしく、感情移入できる。なにしろさわやかイケメンです。
(2)自閉症の少女・ジウ役のキム・ヒャンギの演技力がずば抜けている。自閉症の少女の気持ちに同化できた気がするからすごいです。ハートがピュア。「いいことがしたい」という、けなげな思いに、感情移入できます。自閉症を疑似体験できるのです。弁護士になる夢を持っていたジウが、「私は弁護士にはなれない、自閉症だから。だけど、証人にはなれる」と泣ける言葉を母親に告げて、勇気を振り絞り、法廷で真実を告発する姿も、涙腺がゆるみます。
(3)スノはパーキンソン病の父親と二人暮らし。母親は亡くなり、スノが介護をしています。その父の息子を思う親の愛がしみる。
(4) 殺人容疑の被告女性の表情が秀逸。その表情が裁判の大きなポイントになる。
ということが、挙げられると思います。そこにも注目して見ると、きっと味わいが増すでしょう。
面白いストーリーの共通構造
さて、ここからは、おまけです。
先日、ある漫画編集者さんから、
「売れるストーリーとキャラを作る方法は、この本に尽きますね」と、『超簡単!売れるストーリー&キャラクターの作り方』(沼田やすひろ)というズバリのタイトルの本を勧められました。
その中に、
面白いと思うストーリーには、
ほぼ、共通の13フェイズ構造がある、
と明かされていました。
そこで、試しに、この「無垢なる証人」もあてはめてみたところ、見事に13フェイズ構造に合致したんです!!
よかったら、見終わった後に、答えあわせをしてみてください。
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無垢なる証人の13フェイズ構造
(1.日常)
スノは、パーキンソン病の老いた父の面倒を看る40代独身。有名事務所に移籍したばかりの弁護士。人としての正義感と弁護士業務の間の矛盾に葛藤している。
(2.事件)
ある富豪が、家政婦に殺害される事件が発生。世の注目を集める。その現場を自閉症のジウが目撃する。そして、スノが出世をかけ、その事件の担当をまかされた。
(3.決意)
スノは、被告は無罪である(冤罪)と信じ、それを証明しようとする。被告は、富豪を殺したのではなく、助けようとしたのである、と。
(4.苦境)
目撃者のジウは、被害者は自殺ではなく、殺されたことを証言している。ジウが自閉症の子供のため、スノは、意思疎通ができず、目撃者から直接、状況を確認することができない。
(5.助け)
ジウの親友から、ジウと仲良くなる方法を教わる。
(6.成長・工夫)
ジウに心を開いてもらうため、スノはジウの好きなクイズを出す。スノは少しずつ、ジウとコミュニケーションを取れるようになる。
(7.転換)
見事、検察を論破して裁判に勝ち、被告の無罪を勝ち取る。
(8.試練)
依頼人の弁護のためとはいえ、目撃者のジウを貶めることになり、ジウを傷つけ、ジウの母親の信頼も失う。
(9.破滅)
好きな女性から、会わないようにしたいと告げられる。同時に、無罪を信じていた被告が嘘をついていたと確信する。嘘に手を貸していたことをさとる。
(10.契機)
目撃者の少女ジウとのクイズのやりとりが、スノとジウとの絆を深めていく。
(11.対決)
法廷で自分が弁護すべき被告と、スノのビジネスパートナーでもある被害者の息子の策略を暴く。
(12.排除)
法廷で真相を明らかにする。依頼者の被告の嘘を暴露し、主謀者である被害者の息子の指示であることを明かす。逮捕される。
(13.満足)
好きな女性に告白して夕食をともにする。もう一度、彼女の信頼を取り戻した。
以上です。
この物語で、評価が分かれるところがあるとすれば、弁護士が良心の呵責から、依頼人の不利益になることをしてしまっていいのか、というポイントだと思います。
それに対する本人の反論が、「弁護士だって人間だ」という叫びでした。
それでも、ここは意見が分かれると思いますが、私は、弁護士であっても、こういう生き方の選択があってもいいと思いました。
その結果、彼は、弁護士資格を剥奪されることになるでしょう。それでも正しいことをするという生き方も一つの選択です。
また、本当に依頼人にとって不利益かというと、真実を明らかにしたうえで、減刑を勝ち取ることのほうが、本当の意味で依頼人の利益になる、ということも言えるのではないでしょうか。
みなさんはどう思いますか。