こんにちは、出版社営業部員のかんらくです。
「下町ロケット」のTBSドラマ、始まりましたね。
今、池井戸潤さんの原作本を読んでいます。
今回のドラマは、『下町ロケット ゴースト』がベースになっています。
ゴーストのラストは、先が気になる終わり方になる
でも、小説「ゴースト」のラストは、ものすごく先が気になるところで終わってしまうので、ドラマを見た人は、絶対、早く続きが知りたくなって、いてもたってもおれなくなるはずです。
そのまま放っておかれるのは、生殺し状態で耐えられないこと間違いないでしょう。
ですから、待ちきれず小説の続編を読む人が続出すると思っています。
その続編が、『下町ロケット ヤタガラス』です。
下町ロケットにはビジネスの学びが満載!
読み進めていて、改めて池井戸潤さんの小説は、ビジネスの学びがつまっているなと実感しました。
ビジネス書を読むよりもいいのではないかと思うくらいです。
スキルやノウハウというより、継続的に成功するための根本的なマインドが学べるんです。
簡単に言うと、信義に背いた商売は絶対に成功しない、ということです。
下町ロケット ヤタガラスから学びの言葉を紹介
『下町ロケット ヤタガラス』の中から、ビジネスマインドを学べるセリフを紹介します。
「でかい会社ってのは難しいですね」
あらためて山崎は嘆息した。
「一般的に正しいか正しくないかという以前に、その会社にとって正しいかどうかというダブルスタンダードがあるんですから」
「それが諸悪の根源なのさ」
佃は新たな缶ビールのプルトップを開けた。
「世の中の価値観、世の中の正義。そんな当たり前のことが自分たちの都合で脇に置かれ、忘れ去られる。一体、なにが原因なんだろうな」
ビジネスパートナーである帝国重工の迷走ぶりを受けてのやりとりです。
これは現実にも本当によくある話です。
企業が大きくなるほど、消費者を向かずに、組織の上ばかり見るようになってしまいます。
そして、消費者やマーケットの視点よりも、企業の都合を優先させてしまうのです。
このあたりの問題と課題は、USJのマーケッターだった森岡剛さんの『マーケティングとは「組織革命」である』にくわしいです。
書評を書きましたので、関心のある方は、こちらをお読みください。
次は、天才技術者の島津裕(ドラマではイモトアヤコが熱演)が、佃に言った言葉です。
「私は、ひとに喜んでもらうためのトランスミッションを作りたいんです。帝国重工の的場さんに仕返しするとか、そんなことのために働く気は毛頭ありません」
これは、島津の協同経営者である伊丹が、はじめは技術を世の中に役立てようと、ともに帝国重工を辞めて会社を立ち上げたのに、いつの間にか、かつての上司への復讐が目的になってしまった時のことです。
身につまされました。
上述の『マーケティングとは「組織革命」である』の中でも、森岡さんが指摘しているのですが、自分の利益のために、組織の機能を麻痺させる人間というのが必ずいるものです。
多くの人が、そういう妨げとなる人を、組織の決定機関からはずして、組織の利益をとりもどそうと尽力するのですが、いつのまにか、その人への個人的な感情を晴らすことが目的になってしまっていることがあります。
そうなっては、組織改革は絶対にうまくいかないでしょう。
さて、その伊丹に対して、後半に佃が、言い放ったセリフは、すべての働く人が胸に刻むべき名言だと思います。
「あんたたちの『ダーウィン』(無人農業ロボット)は、下町の技術を世の中の知らしめたいというコンセプトだろう。
だけど、それは本当に正しいんだろうか。
ライセンス云々という話の前に、私が一番、ひっかかってるのはそこだ」
「道具っていうのは、自分の技をひけらかすために作るものじゃない。使う人に喜んでもらうために作るもんだ。
なのにあんたたちのビジョンにあるのは、自分のことばっかりじゃないか。
下町の技術だの、町工場の意地のといってるが、誰が作ろうと、使う人にとってそんなことは関係がない。
本当に大切なことは道具を使う人に寄り添うことだ。あんたたちにその思いがあるのか」
仕事をする目的は、お客様に喜んでもらうため。
このシンプルな真理を伝えるために、池井戸さんは物語を紡ぎ続けているのではないかと思っています。
佃の言葉は、すべての働く人に問われているのだと思います。
最後に紹介するこの言葉は、仕事をするうえで、もっとも根本になることだと思います。
ものづくりに必要なのは、技術や効率だけではない。
それ以上に大切なのは、意義である。
何のためにやるのかーー。その主旨に賛同し、情熱の対象とならない限り、ものづくりは成就しない。そしてそれは社会的な貢献を伴うものでなければならない、と佃は思う。
どんな仕事でも、何のためにやるのか、そしてそれがどう社会的貢献につながるのか、という目的が、根源的に重要だというメッセージ、これは真理だなと思いました。
ビジネスで大事なことは、ほとんど、「下町ロケット」で学べると思っています。
そして、もう一つ。
最後のクライマックス352ページからは、ボロボロと、とめどなく涙が流れてきて、くしゃくしゃになってしまいました。
阿部寛の大演説が、魂を震わせるのです。
ものすごくベタです。ものすごくベタですが、だからこそ強いです。
池井戸さんは、読む人の心を揺さぶる強い型を完全に理解しているのだと思います。
だから、どれを読んでもはずれがない。期待を裏切ることもありません。
池井戸ブランド、大好きです。
なお、ドラマ「下町ロケット」のシーズン1を見逃して、今すぐ見たいという方は、こちらのAmazonプライムビデオで鑑賞できます。
現在、テレビ放送中のドラマの原作本はこちら。
上が、今回のドラマの原作です。
下が、おそらくドラマの最終回のその後のストーリーになるはずです。
ドラマの続きが気になったら、ためらわずにこの原作本を読むことをおすすめします。
絶対にスッキリしますので。
ビジネスの学びが得られる池井戸潤作品は、「下町ロケット」だけではありません。
あの「半沢直樹」シリーズもしかりです。
関心のある方は、こちらの記事もお読みください。