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こんにちは、出版社営業部員のかんらくです。

映画史上もっとも難解といわれる「2001年宇宙の旅 (字幕版)」の謎が、なんと全部解明されていたという話です。

 

評論家の中には、映画はスクリーンに映し出されたものだけで、解釈すべきだと言う人がいます。

が、この作品に関して言えば、それは不可能です。

 

なぜ、そう断言できるのか、町山智浩氏の解説を聞けばわかります。

たまたまYouTubeでヒットした町山氏のWOWOW映画塾の動画を見たら、理解不能と思っていたこの映画の謎が、全解明されていました。

「こう解釈できる」という推測の話ではなく、すべて解答です。

まさに目からウロコでした。

これを見れば、他の解説を見る必要がなくなってしまいます。

永久保存版といえるでしょう。

 

町山智浩の映画塾!「2001年宇宙の旅」<予習編>(約28分)

町山智浩の映画塾!「2001年宇宙の旅」<復習編>(約57分)

 

そうは言っても、動画を見ている時間のない人もあるでしょうから、ポイントを要約したいと思います。

 

まずはじめに一言。

「2001年宇宙の旅」は、「人類の進化」についての映画です。

そして、キューブリック監督は、「神を定義すること」がこの映画を作った目的であると、雑誌のインタビューで明言しています。

 

「人類の進化」と「神の定義」となんの関係があるのか。

この記事を最後まで読んでいただくと分かってもらえると思いますが、このことを頭の隅に置いて、読んで頂きたいと思います。

 

ちなみに町山氏は、こういう書籍も出版しています。

映画の見方がわかる本―『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで (映画秘宝COLLECTION)

 

人類の夜明け、突然現れる猿人の謎

この映画は、長いブラックアウトのあと、何のナレーションもセリフもなく、突然、類人猿がたくさん群れているシーンから始まります。

そして、ある朝、猿人たちが目覚めると、突然、真っ黒な直方体の物体が、地面に突き刺さっているのです。

 

 

高さは猿たちの3倍くらいでしょうか。

これが何なのか、まったく説明がありません。

しかし明らかに、人工物です。

 

結論から言うと、これはエイリアンが、人類を進化させるために設置したモノリスという名前のスーパーコンピューターのようなものです。

これに触れることで、猿人たちは、飛躍的に知恵が発達しました。

そして、人類へと進化していくのです。

 

ちなみに、モノリスの縦:横:高さの比は、1:4:9。

これは、いずれも二乗の数字で、人工物であることを象徴しています。

そんなことスクリーンの情報だけで分かるはずがありません。

 

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猿人が殺し合うシーンの意味

モノリスによって、知恵を与えられた猿人は、骨が武器になることを発見し、やがて縄張り争いを始め、武器を使って殺し合うようになりました。

これは、「キラーエイプ仮説」がベースになっています。

 

キラーエイプ仮説とは、数ある類人猿の中でも、同種族間で殺し合いをする者たちのみが、進化を遂げ人類になった、というものです。

猿は猿同士殺さないけれど、人間は人間同士殺し合うからだという主張です。

 

つまり同種族で殺し合わない猿人は猿のまま現在にいたり、人類と猿人に枝分かれしていったという説です。

ちなみに、この仮説は今では完全に否定されています。

なぜなら、チンパンジーもチンパンジー同士殺し合うからです。

 

なぜ骨が宇宙船に

猿人同士が殺し合うシーンの中で、一匹の猿人が空に向かって投げた動物の大腿骨が、そのまま宇宙船に変わるシーンがあります。

 

 

 

ここは、400万年という時空を飛び越えているシーンです。

 

そして猿人は殺し合うことによって、人類に進化したことの象徴になっています。

なぜなら、宇宙船は実はただの宇宙船ではなく、核ミサイルを搭載した軍事衛星だからです。

 

科学の進歩の最終形は人類をも滅亡の危機に陥れる兵器になりました。

結局、人類は殺し合う武器を進化させただけだというアイロニーです。

これについては、こちらにも記事を書きました。

 

このシーン、元々のシナリオにはナレーションがあったんです。

核ミサイル搭載の各国の人工衛星が、多数、地球の上空を旋回していた、という趣旨の。

それを最終的にキューブリック監督がバッサリ、カットしてしまったのです。

 

なぜ冒頭からセリフもナレーションもないシーンが続くのか

メイキング・オブ・2001年宇宙の旅」という本が、出版されているのですが、そこには多くの裏話が掲載されています。

 

それによると、「2001年宇宙の旅」は本当は、冒頭に11人のテクニカルアドバイザー(技術顧問)の解説映像が入るはずだったのです。

それは学者だったり、技術者だったり、いろいろです。

 

それらの人が、作品のバックグラウンドとなる思想や理論を説明しています。

それを見てから映画を見ると、それぞれのシーンが何を表しているのかよく分かる、そういう構成になっていました。

冒頭に入るはずだった解説

たとえば、

月面にいったら、地球以外の知的生命体の痕跡が見つかるかもしれない、と言われている

という学説。

人工知能が発達すると感情を持つようになる。そして精神病になったり、嫉妬などネガティブな感情を持つようになる

という学説。

人類の次の進化は、肉体をもたない、精神だけの存在になる。人類を進化させた神のようなもの(エイリアン)がいたかもしれない

という思想。

そんな映画のベースとなる理論、思想、学説といったものを、キューブリック監督があっさり切ってしまったのです。

インタビューの撮影も終わっていたにもかかわらず。

つまり、キューブリック監督がバッサリとカットしてしまったので、なんのナレーションも説明もないシーンが続いてしまっているのです。

発売が遅らせられた小説版

しかも、丁寧な説明が書かれている「2001年宇宙の旅」の小説版(決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF))が、映画の公開日までに発売される予定だったのですが、その発刊が遅れ、ますます映画を難解にしてしまいました。

 

著者のアーサー・C・クラークは、キューブリックがゲラ(校正刷)を戻さなかったために発刊が遅れたと語っています。

おそらく、映画の謎を明かさないために、キューブリックは故意にゲラを戻さなかったのでしょう。

少なくともアーサー・クラークはそう思っています。

 

キューブリック監督は天才ですが、人間的にはだいぶ問題があったようです。

つまりこの映画は、監督のキューブリックがわざと難解にしているのです。

ナレーションを切る、説明を切る、小説版の発売を邪魔する、こんなことをわざと行なっているのですから。

 

ただ、それらが残されていたら分かりやすくはなったでしょうが、今日のように映画史に残る傑作と評価されていたかは、何とも言えないところです。

 

アメリカの雑誌「プレイボーイ」でキューブリックは、インタビューに答えて、けっこう種明かしをしてしまっています。

映画の中で、月面でモノリスに宇宙飛行士が触れた瞬間に突然、金属音が鳴り響き、皆が耳を押さえたかと思うと、突然、何の説明もなく、ディスカバリー号が木星に向かって飛んでいるシーンに切り替わります。

 

 

 

 

ハッキリ言って、意味不明なのですが、もともとは、

「モノリスに触ったら、電磁波が木星に向かって発信された。ディスカバリー号は、地球外生命体の確認のため、木星に探査に向かった」

というナレーションが入っていました。

ところが、キューブリック監督が最後に、その説明を切ってしまったのです。

 

AIのハルが暴走した理由

シナリオでは、人工知能のハルが暴走した理由も説明されていました。

それは、こういうことです。

 

・ディスカバリー号の乗組員は、地球外生命体の探査に行くという木星行きの本当の目的を知らされていなかった。

・ハルは、その本当の目的を乗組員に知らせることを禁じられていた。

・乗組員から何度も質問されると、ハルは嘘をつかねばならなくなる。

・人工知能は嘘をつけない。

・ハルに論理矛盾が生じる。

・ハルがノイローゼになる。

 

こうして、ハルは暴走してしまったのですが、これは映画の冒頭でなされるはずだった「人工知能が発達すると、精神病にもなりうる」という考え方を聞いていれば、用意に理解できたことなのです。

 

 

光のシーンは何を表しているのか

ボウマンが、木星に近づいた時、モノリスに近づくと、光の中に吸い込まれるシーンが延々と10分近く続きます。

 

 

これは、スターウォーズ、宇宙戦艦ヤマトでもおなじみのハイパースペースを表しています。

つまりワープです。

モノリスがワープ装置になっています。

言葉を換えると亜空間への入り口、スターゲイトです。

 

光のシーンを抜けたあとの爆発は何を意味しているのか

そしてスターゲイトを抜けたあと、爆発のような場面があります。

 

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これは、超新星の爆発を表しています。

ガスが宇宙空間に広がって渦を巻き始め、恒星系を形成します。

ボウマンは、エイリアンによって超新星の爆発→地球の誕生→人類の誕生を見せられ、地球の歴史を勉強させられているのです。

そこには、エイリアンのある目的があります。

 

突然あらわれた白い部屋は何?

そして、ボウマンが突然、白い部屋にたたずむ場面に切り替わります。

これも、予備知識がなかったらサッパリ意味がわかりません。

 

もともとのシナリオでは、「惑星誕生」のシーンと、「白い部屋」のシーンの間に、猿人たちが群れを作っている「人類の夜明け」のシーンがくるはずだったのでした。

惑星誕生後、モノリスによって猿人が人類に進化させられる。

 

その時間の流れを、一大絵巻のように短時間で見せられたボウマンは、

私がここに来たのは、人類を進化させたモノリスをつくった宇宙人に招かれたからなんだ

と理解する、というシーンだったのです。

それこそが、エイリアンがボウマンに地球の歴史を見せた目的です。

 

ところが、キューブリック監督が、インパクトの強い「人類の夜明け」のシーンを冒頭にもってきてしまったから、時系列が狂い、訳がわからなくなってしまいました。

こういうことを平気でしてしまうキューブリック監督は、おそらくサイコパスですね。

 

この映画を一番難解にしている最大の要因

この映画をもっとも難解にしている最大の要因は、

エイリアンがテーマなのに、画面にエイリアンが出てこない、ということです。

ほとんどの人が、映画を見て、エイリアンがテーマだとは思えないでしょう。

 

映画で使われなかったシナリオ

失われた宇宙の旅2001 (ハヤカワ文庫SF)」という本があるのですが、そこには、映画で使われなかったシナリオが再録されています。

そこには、エイリアンが、猿人に武器の使い方を教えているシーンがあるのです。

それがあれば、こんなに難解な映画にはならなかったでしょう。

 

唯一、エイリアンの存在を示すシーン

劇中、エイリアンの姿は1回も出てこないのですが、1箇所だけ、エイリアンの存在を示すシーンがあります。

それは、ボウマンが宇宙人によって招かれた白い部屋で、笑い声のような、ささやき声が突然聞こえてくるところがあります。

 

あれこそ、人類を監視しているエイリアンの存在証明なのです。

なぜ、それがエイリアンの声だと分かったのか、というと、その声をめぐって裁判になったからなんです。

 

あの声は、作曲家・リゲティの「アバンチュール」という曲の一部なのですが、それを無許可で使用したということで、リゲティの財団からキューブリック監督が訴えられました。

その裁判記録に、「曲の一部を宇宙人の笑い声として無断で使用した」と記載されているのです。

 

白い部屋の意味

では、突然出現した白い部屋は何なのか。

それは、監督と脚本家との間で、宇宙人とボウマンが出会うシーンをどうするか、ということが問題になりました。

 

そこで、キューブリック監督は、「地球の高級ホテルのような場所で会う」というのはどうか、という提案をしました。

しかし、宇宙人は、地球の高級ホテルを知りません。

そこで、エイリアンがボウマンの記憶の中から高級ホテルのイメージを引き出し、再現したことにしたのです。

地球からはるばる旅してきたボウマン船長をもてなすために。

 

IMG 6719

 

宇宙人は、そして肉体を持たなくなった

エイリアンはなぜ、声だけで姿を見せなかったのか。

実はエイリアンは進化の過程で、ついに電脳化したという設定です。

肉体は必要がなくなったのです。

 

データだけの存在。

もちろんデータもそれを記録する物質が必要ですが、そこからさらに重力波に変換することで、完全に物質的な存在から解放されました。

そこまでいくと、姿がありませんから一種、神のような存在になります。

 

姿はない、でも意思はあるのです。

ここに、この「2001年宇宙の旅」のメッセージがあります。

 

この作品をつくった目的は「神の定義」

キューブリック監督は、こういう趣旨のことを語っています。

「科学の進歩で、神の存在は否定された。

でも、神は必要である。

なぜなら、おびただしい数の核ミサイルを積んだ衛星が地球の上空を飛んでいる時代。

こんな危機に直面している人類には、救いが必要だ。

ならば、つくればいい。

神を定義すればいい。

それが、この作品の目的である」

と。

日本人には理解しがたい考え方ですが、難解だけど名作といわれる作品は、背景にある思想や哲学を知らないと、理解できないことが多いのです。

 

ピエール・ド・シャルダンの思想

この思想は、キューブリックのオリジナルではなく、提唱した神学者がいます。

ピエール・ド・シャルダンという人です。

シャルダンは、こう言っています。

「人類は進化したら、最終的に心だけの存在になる。

そして、人類は神になる」

キリスト教的進化論といわれるそうですが、この説を唱えたことによって、シャルダンは、バチカンから破門されてしまいました。

そりゃそうでしょう。

このシャルダンの理論が、キューブリックのメッセージの元になっています。

 

人類は「超人」に進化するために、一度赤ん坊に生まれ変わる

そして、この思想はもっとさかのぼると、ダーウィンの進化論にインスパイアーされたものです。

人類の祖先は猿である、という説です。

これは、神がアダムとイヴをはじめに創ったという聖書の描写と真っ向からぶつかります。

とはいえ、進化論が世の中の常識になっているのですから、神学者もキリスト教と矛盾させないための新説を唱えざるを得なかったのでしょう。

「そうしないと現代人を納得させることはとてもできない」と考えても無理はありません。

そのダーウィンの進化論にインスパイアーされたニーチェが、「超人」という著作を残しました。

 

ニーチェは、人類は進化の行き着く先として「超人」になる。その前に一旦、無垢な赤ん坊に生まれ変わると説いているそうです。

欧米人は、こんな荒唐無稽とも思えることを学問として大真面目に主張しているのですね。

 

ボウマン船長はなぜラストで、赤ん坊になったのか

さて、ボウマン船長はなぜラストシーンで、赤ん坊になっていたのか。

予備知識がなかったら、これもチンプンカンプンですよね。

 

この赤ん坊こそ、ニーチェが説く、「超人に進化するために、一度、生まれ変わる赤ん坊」を表しているのです。

それをスターチャイルドと呼ばれています。

 

 

 

はじめのシナリオでは、赤ん坊は、地球に帰ってきて、上空に飛んでいる核兵器を皆、(念力で?)消してしまうことになっていました。

そして人類は、スターチャイルドによって救われる、という映画だったのです。

 

原題の「オデッセイ」は、本来、生きて帰りし物語なのです。

この続きが、「2010年 (字幕版)」に描かれています。(今ならAmazonプライムビデオで視聴できます)

 

 

結論。「2001年宇宙の旅」は人類の進化の物語

結論、映画「2001年宇宙の旅」は、エイリアンの導きによって、人類が超人にまで進化させられる物語なのです。

そして、最終的には肉体を持たない神になるという話です。

 

残された最後の謎、七つのダイヤモンド

町山氏によると、最後に一つだけ、謎が残されいているそうです。

それは、ボウマンが亜空間をワープし、大気圏に突入する直前に7つのダイヤモンドが空中に浮かんでいる場面です。

 

IMG 6718

 

これが一体、何を表しているのか。

これについては、特殊映像の技術者への発注書がないそうなんです。

それ以外の映像は、モノリスにしても技術者への発注書にそれが何なのかを書いてあるので、その意味するところが明らかになります。

 

町山氏は、当時のSFXスーパーバイザー(特殊映像の技術者)で、今ではかなりの高齢となったダグラス・トランブル氏に取材の申し入れをしているそうです。

本人に会って直接聞くということですね。

 

ここが、町山氏の解説が、他の映画解説者と一線を画しているところだと思います。

推測ではなく、徹底的に取材調査して圧倒的な情報量で解説されるので、議論の余地がないのです。

 

この町山氏の解説を知ったうえで、もう一度、映画を見ると、まったく違ってみえます。

アマゾン・プライムビデオでは、今なら見放題で無料で鑑賞できるのでおすすめです。

2001年宇宙の旅 (字幕版)

 

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