こんにちは、出版社営業部員のかんらくです。
今さらながら、ショーン・コネリー主演の名作「レッド・オクトーバーを追え! (字幕版)」を初めて見ました。
結論から言って予想よりもずっと面白く、期待値を上回ってきました。
見てよかった満足度は、★★★★☆星4つです。
目次
期待値よりも大きく上回ってきた
とにかく、いちばん言いたいことは、繰り返しになりますが、期待より満足した、ということです。
映画のタイトルは知っていて、ショーン・コネリーがアップのジャケットが有名ですよね。
ですから、なんとなく、ショーン・コネリーが「レッド・オクトーバー」を追う物語なのかなと思っていました。
「レッド・オクトーバー」がいったい何なのかは、知らないまま。
まさかショーン・コネリーが、ソ連の原子力潜水艦の艦長で、その最新型原潜の名前が「レッド・オクトーバー」だとは夢にも思わず。
「レッド・オクトーバーを追え」は「ジャック・ライアン」シリーズの1作
そして、実は、トム・クランシー原作の「ジャック・ライアン」シリーズの一つであるということも最近知ったのです。
Amazonプライムのオリジナル作品「CIA分析官/ジャック・ライアン」を見たからです。
その流れで、「ジャック・ライアン」をネットで調べたら、この映画がシリーズの1作だと知りました。
ですから、この映画は、ショーン・コネリー(ラミレス艦長)とジャック・ライアンのダブル主演といえるでしょう。
二人とも、超主役級にキャラが立ってますから。
ショーン・コネリーのいぶし銀の存在感は言うまでもありませんが、ライアンも負けていません。
見た目、常識人なのに、破天荒で、お偉方の前でズケズケと意見を言います。
それがお偉方を黙らせるほど、めちゃくちゃ鋭くて、頭がいい!
そのうえ、情が深く、信義にあつい、ときているからたまりません。
魅力的なキャラが二人もいたら、映画が面白くなるのは自明です。
ショーン・コネリーの天才的な指揮官ぶりも必見!
さらに言うと、アメリカ側の原潜「ダラス」の艦長もいい味を出しています。
懐が広く、話が分かる人だし、ソ連が放った魚雷の交わし方がお見事です。
さて、この映画の面白さは、ショーン・コネリーが、アメリカに敵対するテロリストなのか、友好の使者なのか、もっと言えば善なのか悪なのか(アメリカにとってですが)、それが最初、分からないところにあります。
なぜ分からないのかというと、ラミレス艦長(ショーン・コネリー)が指揮する「レッド・オクトーバー」は、無音で進行することができる超最新式の原子力潜水艦であるという点が鍵になります。
つまり、誰にも探知されないまま、敵国の最深部に侵入し、核爆弾を打ち込むことのできる脅威の戦艦なのです。
ですから、ソ連本国との交信を断った潜水艦「レッド・オクトーバー」が、アメリカへの攻撃を目的としているのか、はたまたそれ以外なのか、目的が分からないのです。
舞台設定は1984年、アメリカとソ連が世界を二分していた冷戦時代、真っ只中です。
アメリカ側は当然、自国への脅威と判断し、対策に躍起になっているのですが、その時、ライアンがもうひとつの可能性を示唆するのです。
すわなち亡命です。
ラミレス艦長の目的は? ここからネタバレあり
そして、ライアンの読みはズバリ的中します。
ラミレス艦長の目的は、最新のソ連製の原子力潜水艦を手土産に、アメリカへ亡命することにあったのです。
しかしなぜ? なんのために?
その理由はライアンにもつかめません。
常識的に考えて、ソ連で英雄と崇敬されているエリート軍人がなぜわざわざアメリカへ亡命?と当然思いますよね。
その時はまだ、米ソの力は拮抗していましたから。
それを納得させる理由は、こういうことでした。
ラミレス艦長は、新型潜水艦「レッド・オクトーバー」の装備を見た時、その艦が造られた目的を瞬時にさとりました。
スクリューを使わずに、無音で進行できる設計にしたのは、ソ連の政治家たちの思惑が、アメリカへの奇襲攻撃にあるということを。
アメリカに気づかれないまま至近距離まで接近し、核弾頭を打ち込んで、何事もなかったかのように済ますつもりであると。
戦争が勃発し、大勢の無駄な血が、米ソ両国で流されることを防ぎたかったのだと、艦長自らがライアンに告白した亡命の理由です。
これにより、祖国に背を向けても、ラミレス艦長の好感度は失われることはありません。
それにしてもこの物語は、あの米ソ冷戦時代という設定でこそ、成り立つものです。
ロシアがソ連であったことすら知らない人たちには、分からない世界観ですよね。
あの二大大国によって、世界が二分されていた独特の空気感を我々の世代は肌で感じていたものです。
その一つの象徴的な作品が、「ロッキー4」ですね。
クライマックスの必見シーン
さて、後半のクライマックスの感動シーンは、レッド・オクトーバーの中で、両国の艦長が対面するシーンです。
アメリカ側の艦長が、最高級の敬意をはらって、ソ連の士官たちの亡命を受け入れる場面がちょっと感動的です。
アメリカはいい国だなと思わせるに十分な演出です。
アメリカは、亡命者に対して非常に寛容な風土なんだなと思わせます。
普通なら、そんな要人の亡命を原子力潜水艦ごと受け入れたら、米ソの戦争が勃発するのでは?と思いますが、ソ連としては、アメリカに負い目があります。
というのは、ソ連側はアメリカに、「原潜が暴走してアメリカを攻撃しようとしているので、見つけたら撃沈してほしい」と嘘をついていたので、「レッド・オクトーバー」がアメリカに亡命したのではないか、という疑いを糾弾することができなかったのです。
ライアンの学び
さて、ここでライアンの人柄から、実践的な学びがえられます。
ラミレス艦長とライアンが、潜水艦内で対面した時、艦長はこう聞きます。
「(潜水艦内の)原子炉事故が偽りだと、どうして分かったのかね?」
ライアンは、
「あなたの立場で推理をしました」
と答えるのです。
このマインドが、ライアンの観察能力と魅力を加速度的に、倍加させています。
艦長の立場に立って、考えたら、亡命するためには乗組員を巻き添えにするわけにはいかない。
彼らを納得づくで、艦から退去させるためには、(虚偽の)原子炉事故は、かっこうの口実になるはずだと推理したのです。
彼のこの発想法は、Amazonプライムオリジナルの作品で、中東のテロリスト、スレイマンの陰謀を見抜く時にも遺憾なく発揮されていました。
ただ、観察眼があるだけでなく、相手の立場に立ってそれを分析する思考のクセがあってこそ、その力が発揮されるのです。
これは、ビジネスにおいても、消費者理解を深めるために不可欠な発想法です。
奇跡的な結末へ
かくして、この世界規模の大事件が、そもそもなかったものとして、永久に隠蔽されるという、奇跡的な結末を迎えます。
ちなみに、ソ連のナンバー2は、ジュラシック・パークでグラント博士を演じた俳優です。
こんなところにも出演していたのですね。
それにしても、まさか、潜水艦ごとの亡命が、こんなに友好的に成功するとは。
見事に、ソ連の士官たちはアメリカでの暮らしが約束されました。
ライアンの飾らないフレンドリーなキャラによるところも大きいですが、終わり方はとてもさわやかです。
後味が爽快ですよ!
いくつかあるツッコミどころには目をつぶろう
たしかに、ネット上で論じられているように、この映画には瑕疵(かし)と言えなくもないツッコミどころがいくつかあるのは否めません。
具体的に言うと、ソ連の原潜の士官たちが、英語をしゃべったり、ロシア語をしゃべったり統一感に欠けています。
アメリカ人に合わせたわけでなく、ロシア人しかいないところで、英語で会話をしているのはやっぱりヘンです。
また、国家にロイヤリティの高いソ連の軍人士官たちが、そろってアメリカに亡命をするなど、いくら戦争を防ぐためとはいえ、現実的ではありません。
そんな、ツッコミどころには目をつぶり、エンターテイメントと楽しむには十分な作品に仕上がっていました。
米ソの冷戦時代を知る人なら、ぜひ当時の空気を思い出しながら、見ていただきたい映画です。
私は【TSUTAYA TV】 の見放題で鑑賞しましたが、Amazonプライムのレンタルでも視聴できます。
Amazonプライムオリジナルの「ジャック・ライアン」は、こちらにレビューを書きましたので、よかったらご覧ください。