こんにちは、出版社営業部員のかんらくです。
発売当時(十年前)にも読みましたが、最近、木村秋則さんのその後を、テレビで特集されていたのを見て、この本を再読しました。
言わずと知れた、日本で初めてリンゴの完全無農薬栽培を成し遂げた木村秋則さんの記録です。
大ベストセラーになり、映画化もされました。
木村秋則さんの1年後の悲劇
テレビでは、一躍時の人になり、全国を講演して回ることになった木村さんの悲劇が報じられていました。
ブームから1年ほど経って、留守がちな木村さんの分まで、畑作業の負担が増えた奥さんが脳卒中で半身不随になり、木村さんにも胃ガンが判明したという話です。
さらに今年、青森の農作物に、感染病が蔓延し、壊滅状態になったというのです。
「もう無農薬をやめようか」とさえ思った木村さんは、そこから不死鳥のように蘇ったという話です。
10年前に読んだ時の感動と衝撃が蘇ってきました。
「奇跡のリンゴ」の大ヒットは、ライターの石川拓治さんの筆力があってこそ
再読して分かったのは、ノンフィクションライターの著者、石川拓治さんの徹底した取材と筆力が、木村秋則さんの魅力を最大限に引き出した、ということでした。
やっぱり、その人物の魅力を引き出すには、本人の一人称でなく、第三者がその人物を描写するのが一番だと改めて思いました。
本人が著者になると、自分のことを語るわけですから、どんなに謙虚に語っても、どうしても自慢話になってしまうというジレンマがあります。
また、自慢話になるのを避けて、体験談が薄っぺらになってしまうという宿命もあるのです。
取材と調査と筆の力と
木村さん自身も、飾らない人柄が魅力的(あの笑顔を見れば明らか!)なのですが、それが存分に発揮されています。
現地取材が徹底していて、足で書いている原稿であるのはもちろん、農家や農薬の歴史も調べてあり、シーボルトの旅行記まで引用されているのです。
そして文章がうまい!
願わくば、この石川さんに、現在進行中の企画の執筆を依頼したいと思いました。
特に、記憶に映像となって残っている場面は2つ。
特に印象的な2つのシーン
1つは、木村さんが精魂尽きて、無農薬栽培をあきらめ、夜の山に入って、首をつろうとする場面です。
変な話、石川さんの描写によって、神秘的に美しい光景を浮かび上がらせていました。
もう一つ、とても印象的なのが、あとがきです。
この原稿が、まさに木村さんの畑の中で執筆されていることが明かされるのですが、その畑の様子が鮮烈に脳裏に焼き付きました。
畑の中で、目の前に木村さんの栽培したリンゴを見ながら、書いているから、こんなにもリアルで、ハートフルで、情熱がこもっているのだと思いました。
バッタが飛び交う情景も見えるし、土や草の匂いすら感じられます。
ノンフィクション作品の傑作中の傑作だと思っています。
ぜひ、この世界観を味わって頂きたいと思います。