こんにちは、出版社勤務のかんらくです。
USJをV字回復させたマーケッターとして有名な森岡毅さんの新刊、
『マーケティングとは「組織革命」である。 個人も会社も劇的に成長する森岡メソッド』
を読んだので、心に残ったフレーズと感想を書きたいと思います。
この本を読むかどうか、迷っている人は参考にしてみてください。
琴線に触れる文章があれば、ぜひ一読されることをお勧めします。
目次
森岡毅さんのビジネス書が好き
私は、森岡毅さんのビジネス書が大好きです。
森岡さんの考え方が好きです。
森岡さんの生き方が好きです。
森岡さんの文章が好きです。
ビジネス書なのに、ノンフィクション小説を読んでいるかのように興奮します。
これまで読破したのは、
①『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』
②『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』
③『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』
の3冊です。
特に①と②は、それぞれ5回は読みました。
泣けるビジネス書
②に至っては、カプコンとの提携や東日本大震災のくだりで、ビジネス書なのに不覚にも涙が出てきました。
USJの突然の快進撃は、東京にいても感じましたが、池井戸潤さんの小説ばりに、こんなにも絶体絶命の危機に何度も追い込まれた果ての大逆転劇だったとは・・・。
小説として読んでも十分面白い上に、ビジネススキルも上がるとあっては、こんなに繰り返し読む価値のある本はそうはありません。
できることなら自社から出したかった本です。
ビジネス書の出版社ではないので、叶わぬ願いではありましたが・・・。
『マーケティングとは「組織革命」である』レビュー
さて、本題に入ります。
この本は、一言で言うと、「マーケティングと組織革命はセットで考えなけれならない」ということです。
言葉をかえると、マーケティングを機能させるには組織革命が必須なので、どんなに腕のいいマーケッターがいても、立てた戦略を実行できる組織がなければ、結果は1ミリも出せないということなんです。
なら、組織改革もセットでやっちゃおうじゃないか、という森岡さんらしいポジティブなメッセージです。
組織革命なんてトップのやること?
こう聞くと、組織改革なんて、組織のトップか役員じゃなきゃできっこないでしょ、と思いますよね。
ところが森岡さんは、「組織革命は下からでも十分にできるし、現に自分は下からやりましたよ」と断言するのです。
そのスキルが惜しげもなく披露されています。
2,000円足らずでは得られないプライスレスな値があると私は確信します。
だから、本ってすごいんですよね。
いい本を世に送り出す出版の醍醐味はこういうところにあると思います。
(出版社の仕事に関心のある方はこちら)
そもそもマーケティングとは何ぞ?
さて、そもそもタイトルにあるマーケティングとは何ぞや?
マーケティングという言葉はよく使うし、よく聞きますが、いざ「マーケティングって何?」と聞かれると、意外と一言で答えられないものです。
しかし森岡さんは、「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」の中で、ズバリこう明言しています。
マーケティングの本質とは「売れる仕組みを作ること」です。
そして、続けて、
どうやって売れるようにするのかと言うと、消費者と商品の接点を制する(コントロールする)ことで売れるようにするのです。
と。
これは、この記事の本題ではないので、もっと詳しく知りたい方は、USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門をお読みください。
目からウロコを保証します!
では、マーケティングの定義を書いたところで、売れる仕組みを作ることと、組織革命と、どんな関係があるのか。
心に残ったフレーズを列挙していきます。
心揺さぶられるフレーズ
専門性に優れたマーケター個人を雇えば、あるいは強いマーケティング部さえあれば、マーケティングができるようになると多くの人は考えています。
しかし現実はそうではないのです。その原因は、組織の構造や意思疎通回路が、マーケティングを機能させるようにできていないことです。
優秀なマーケターさえいれば成果が出ると私も思っていました。
多くの優秀と言われるマーケターがさまざまな会社に単騎で飛び込んでも結果を出せずに苦戦しているのはそのためです。立てた策を実行できないのです。
良策を立てたとしても、会社トップに策を決断させることができない、あるいは採用しても組織が策通りに動かないから、どちらの場合も結果が出ません。
マーケターがどんなにいいスキームを立てても、それを実施できる組織がなければ絵に描いた餅みたいなものなんですね。
だから、マーケティングと組織はセットなんです。
企業の平均寿命はおよそ30年と言われています。
企業が消えゆく現象の共通点は、変化し続ける外部環境に適応できなくなることです。
まだ本気になれば変革できる体力のあるうちに、自己変革を決断できないと、組織は変化する市場に適応できずに滅んでしまいます。
しかし現実には、どうしようもなくなる前に自己変革するのは簡単ではありません。実際に多くの会社が英断を下せず、平均30年で死んでいるのです。
フットワークの重い、硬直した組織は変化に対応できず、長くは続かないのですね。
では改革すべき組織とはどんな組織なのか、その特徴を具体的に解説されています。
そこが、的確すぎてツボでした。
森岡さんの文章が好きというゆえんです。
かなり長くなりますが、ツボすぎて心の中で拍手喝采したくなるので全部引用したいと思います。
おそらく誰もが目にしたことがあるエゴの表出パターンを紹介しましょう。
意思決定者でもないのに「自分は聞いてない!」が口癖の、ややこしい人は周りにいませんか?
事前に自分に相談してくれると内容にはあまりこだわりなく!?機嫌はすこぶる良いのですが、自分が知らないことが会議で話されたりすると、「自分は聞いていない!」と、これまた内容にはあまりこだわりなく反対のための反対を始めるややこしい人です。
こういうタイプは、自分の下から情報を集めて、上司にまとめて報告するのが仕事だと思い込んでいる残念な人です。
常に情報伝達の間に立とうとして情報を自分が支配し丸抱えしようとします。
部分しか知らない部下達から情報を集めて、その件の全容が自分以外は誰にもわからない状態をつくろうとします。
そして上司と話す時は、全て受け売り情報なのに、まるで自分が全てを取り仕切っているかのように話す。
そうやって自分の存在価値を創り出そうとします。
したがって、自分を飛び越えて自分の上司のところに行かれたり、自分をパスして情報を回されたりすることは、このタイプの人にとっては自己保存を脅かされる致命的な大問題です。
だから「自分は聞いていない!」と必要以上に怒るのです。
態度は偉そうなキツネのように見えますが、やっていることは伝書鳩、その正体は〝羊〟なのです。
組織のリーダーであれば、真っ先にこのタイプの人間を〝処理〟しなくてはなりません。
何度も言いますが、自己保存を制御する仕組みがないから、個人にゆだねすぎているから、こんな情報をせき止める人間が暗躍して組織を毒していくのです。
下から情報を搾取して自分を上司に良く見せようとするだけの存在は、組織コミュニケーションを阻害するがん細胞の一種です。
このタイプの人間がいるせいで上司に情報が入ってこないし、部下同士や同僚間で情報共有が進まず、全体像が把握しにくくなる。
情報とは、会社にとって極めて重要な経営資源の一つです。
それを自己保存のために誰かが占有しようとする行為を野放しにしてはいけない。
付加価値を生まない上司は、部下には面倒なだけで、組織にとっても要らないのです。
組織を機能しなくさせる人の心理が手に取るように理解できました。
しかし、自分一人で組織を改革すると考えると、目の前にそそり立つ垂直の壁を乗り越えるように不可能なことに思われますね。
そこで、森岡さんは、こう言っています。
たった一人で全て実現できることは僅かしかないけれども、たった一人でも〝変化の起点〟になることはできます。
たった一人でも、変化の起点になると考えると俄然、現実味を帯びてきますね。
「下の立場から上のやることや組織を変えるなんて不可能だ!」と言う人は多いです。
確かに職務権限無しに組織に影響力を行使して物事をより良く変えるのは簡単ではありません。
しかし私の経験と知見に基づく結論を申し上げますと、下の立場からでも組織をより良く変えていくことは可能です。
より正確に言えば、下の立場からでも「変えられること」と、「変えられないこと」の両方があるのです。
下の立場のたった一人の人間でも、変えられることを見極めれば、やりようにやっては変えられますし、少なくとも組織において意味のある変化のきっかけになることはできます。
これが、この本のボディメッセージだと思います。
その方法が、森岡さんの体験を交えて、解説されています。
その一つが、自分が達成したい目的と、上司もしくは組織全体の目的と、ベクトルが重なるように大義名分を設定できれば、下からでも組織は変えられるということでした。
グローバルなマクロの視点を持つためにも、ぜひ一読してみてください!
※『USJを劇的に変えた たった一つの考え方』のレビュー記事はこちら。