こんにちは、年100本超えの映画好き・かんらくです。
3部門でアカデミー賞を受賞し、傑作の呼び声高い「セッション(字幕版)」をAmazonプライムビデオで見ました。
結論から言うと、多くのレビューが指摘しているようにラスト10分にすべてが詰まった傑作です。
傑作ですから、観てよかったと思える作品でした。
満足度は★★★です。
が、その面白さを味わうには忍耐も必要だということを知っていなければなりません。
どういうことか。
まず、あらすじを説明しましょう。
目次
ストーリー(あらすじ)
私がいつも参考にしている、ぴあの「映画生活」から引用します。
辛口の映画レビューサイトですが、そこで81点をたたき出していますから、かなりの高評価といえます。
名門音楽大学に入学したニーマンは、(教師である)フレッチャーのバンドにスカウトされる。
ここで成功すれば偉大な音楽家への野心は叶ったも同然だった。
しかし待ち受けていたのは、天才を生み出すことに取りつかれたフレッチャーの、“完璧“を求める狂気のレッスンだった。
狂気的な鬼教師と野心家の生徒の物語
フレッチャーは、名優 J・K・シモンズ演じる音楽大学の狂気的な鬼教師です。
ニーマンは若手俳優マイルズ・テラーが演じる偉大な音楽家を目指す、ドラム奏者の生徒です。
記事のトップに掲げてある映画のジャケットにあるように、この映画は、ほぼニーマンと、鬼教師のフレッチャー二人の物語と言っても過言ではありません。
ラスト10分の恍惚を味わうには
ラスト10分の恍惚を味わうには、そこまで野心家ニーマンのエゴと、鬼教師フレッチャーの異常な恫喝につき合わなくてはいけないんです。
私も途中で挫折しそうになりましたが、ほとんどのレビューで、ラスト10分が最高と語られているので、がまんして見続けました。
ちょうど、司馬遼太郎の『坂の上の雲』で、バルチック艦隊を撃滅した日本海海戦のシーンを読むために、序盤の退屈に付き合わなければならないのと似ていました。
恍惚に至る伝説のラスト10分(ここからネタバレあり)
二人の師弟関係が完全に崩壊したあと、しばらくして、たまたま街で再会します。
その時、フレッチャーが過去の弁明をしたので、2人は分かり合えたのかと思わせられるのですが、それがとんでもないペテンだったのです。
フレッチャーはニーマンの才能を認めているかのような甘い言葉を吐き、自分が指揮をとる演奏会に出演してくれないかと、しおらしく頼みます。
仕組まれた罠
これが実はフレッチャーが巧妙に仕組んだ罠だったのです。
ニーマンにだけ嘘の演奏曲を伝え、当日舞台上で、彼が知らない曲を演奏することを告げるのです。
そう、いわゆる公開処刑です。
自分の演奏会をぶち壊しにしてもニーマンに復讐を果たそうとしたのです。
この男は天才音楽家ですが、間違いなくサイコパスですね。
ニーマンの逆襲
立場をなくし、一度は舞台から去ろうとしたニーマン。
ところが、ここから予想もしなかったニーマンの華麗なる逆襲が始まります。
フレッチャーが聴衆に向かって、「今度はスローな曲を・・・」と言いかけた時、
舞台に戻ったニーマンが、いきなりアグレッシブにドラムを叩き出すのです。
キーワードは「合図する」
唖然とするフレッチャー。
顔を近づけて脅しの言葉を吐く彼を、ニーマンは見事に無視して、まるでハエでも追い払うかのようにフレッチャーの鼻先にシンバルの爆音を叩きつけます。
このシーンは痛快でした。
そして「合図する」という、この映画最大のキーワードを放つのです。
このセリフは、ぜひ覚えておいてください。
その時、立場は完全に逆転した
絶対的な指揮者であったフレッチャーから、ニーマンが主導権を奪い、このセッションを完全に支配した瞬間でした。
ニーマンはこの言葉を2回言います。
他のバンドのメンバーさえも、ニーマンの圧倒的なドラム演奏に支配され、フレッチャーではなく、ニーマンの演奏に合わせていくのです。
最高のセッションを実現
絶対的に憎み合っていた2人が皮肉にも、その衝突の果てに最高のセッションを実現するのです。
演奏が理想の高みへと突き抜けた瞬間、フレッチャーの表情は怒りと憎悪から、やがて歓喜に変わります。
この映画のラスト10分は、人が立ち入れない音楽の向こう側に足を踏み入れてしまったようです。
そして演奏が終了した瞬間に、なんの説明も余韻もなしに突然、映画も終わるのです。
これが潔くてムチャクチャかっこいいです。
映画が終わった、その後の二人は
ただ、映画はここで終わりますが、現実にはそのあとも時間は続くわけで、演奏後、果たして二人がどんな会話をするのか、考えると恐ろしくもあり、興味津々でもあります。
こればかりは各々、想像するしかありません。
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この作品は、現在動画配信サービスのAmazonプライムビデオと、dTVで鑑賞できます。
どちらも1ヶ月は無料お試し視聴ができます。
ぜひ、映画史に残る狂気の演奏を堪能してください。